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2/13(木)に開催された【第三回スタッフトーク:音楽回】のレポートが到着!

この度、第三回スタッフトークが開催されました!

演出回、作画回と続いてきた本イベントもついに最終回となり、この日のトークテーマは「音楽」。温かい拍手に迎えられながら藤森監督と、長年にわたり「忍たま乱太郎」を彩る音楽を手がけてきた馬飼野康二さんが登壇しました。ドクタケ忍者隊を彷彿とさせる赤いサングラスをかけた二人はユーモアたっぷりに挨拶し、和やかな雰囲気のなかトークイベントがスタートしました。

まずは13年ぶりの劇場版となる本作の話を受けた際の心境について、馬飼野さんは「アニメシリーズも33年経ちますが、ちょうど13年前に劇場版アニメ「忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段」をやりまして、その頃から比べても今回の劇場版の音楽は、自分の中でも特に力の入った仕事になりました。藤森監督含め、プロデューサー陣やスタッフの方々が、スタートの時から本作にかけているイメージがもの凄く強くて、その熱さに押されて一生懸命頑張ったという感じです。一番初めにお話をいただいた時が2023年くらいで、一回目の打ち合わせがプロデューサー陣と藤森監督、音楽出版の方など5、6人でスタートしたんですけど、その時に”やるぞスイッチ”みたいなものが皆さん入っていて。でもすごく良い作品になって嬉しく思います」と振り返りつつ語りました。

馬飼野さんといえば「魔界之先生」

藤森監督は馬飼野さんとの出会いについて、「劇場版アニメ「忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段」のときに初めて馬飼野先生にお会いしたんですけれども、替え歌の歌詞を書いて「この歌詞にあわせて編曲をお願いしたいんですけど」と言ったら、「分からないので今録音するから歌って」って言われて。いきなりプロの作曲家さんの前で歌う破目になったというのが最初の出会いでした」と振り返りながら替え歌を歌い、会場を笑わせました。

本作にも実は登場しているという、馬飼野さんがモデルのキャラクター「魔界之小路」について訊かれると、藤森監督は「天鬼を洗脳するときの漫画の中に魔界之先生が描かれています。黒戸カゲ先生と同じコマです」と、魔界之先生の登場シーンについて明かしました。さらに、「劇場版アニメ「忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段」にも登場していたという魔界之先生。藤森監督は「自分の思いつきみたいな替え歌に曲をつけてくれたので、その感謝の気持ちを込めて、あの替え歌の中の背景部分に魔界之先生の顔が2カットでてくるんですよ。多分気付かないと思います。忍ばせ過ぎちゃって、自分で改めて確かめてもなかなか分からなかったんですけれど。大きな顔を撮影でエンボス加工みたいにして、背景の上にスライドさせている2カットがあります。ヒントとして歌いますと、”石火矢の撃ち方 まず砲腔を掃除して火薬と弾丸”の後の”詰めましょ”のところに1カット目。”安全のため親指で火門をふさごう”の後の”WOW WOW”のところに2カット目」と、再び替え歌を歌いつつ13年越しの種明かしをし、「もしご覧になる機会がありましたらぜひ探してみてください」と語りました。

稗田八方斎のダンスシーン

本作の制作にあたって、企画サイドから「映画ならではの音楽演出をしたい」という相談を受けていた藤森監督。音楽に関してこだわった

点について訊かれると「映画での音楽演出を考えたときに、こちらとしてもミュージカルシーンをやりたいという話をさせていただいて、結構最初から構想をしていました。本作用に一番最初に描いたのが、等身を伸ばした稗田八方斎だったんですよ。その時から八方斎が歌って踊るぞっていうのは決めていました。」と語り、馬飼野さんも「踊るっていうので少しびっくりしたんですよ。僕がこのシーンの為に最初に作った曲は結構ミュージカルっぽくて、歌詞も少し難しい言い回しが入っていたんですよね。監督、プロデューサー陣に聞いていただき、もう少し分かりやすいシンプルなものを、ということで作ったのが今回の曲です」、藤森監督は「元々アイデアとして出していた歌詞を丁寧に入れてくださって、メロディアスな曲でとても素敵だったのですが、もう少し洗脳する曲にならないかなとご相談しました」と、やり取りを重ねて今の楽曲を作り上げたことを語りました。馬飼野さんは、間宮康弘(稗田八方斎役)についても「間宮さんとはデモテープの段階でやり取りして、声の感じとかを聴きながらやらせていただき、作る側としては非常に良かったです」と絶賛しました。続けてダンスシーンの収録時の思い出を訊かれると、馬飼野さんは「サビのところを複数の人数で歌ってもらいたいというのがあったので、間宮さんにご相談しました。声優さんってすごいなと思ったのが、「次はじゃあキャラを変えて、ちょっととぼけた感じの人」とか言うと、すぐその声が出るんですよ。それで4回ぐらいオーバーダビングして、4人分のコーラスが入っているんですけど、実は間宮さんが一人でやっているんですよ」と、ダンスシーンはコーラスも含めてすべて間宮の声だったことを明かしました。

テーマ曲「勇気100%」について

「忍たま」を象徴する曲であり、本作では日常を象徴する曲として扱われたという「勇気100%」。改めて本作での扱いについて訊かれた藤森監督は「いやいや、御手洗さんがそれを訊くのかみたいな(笑)御手洗さんは最初から「勇気100%は今回はエンディングに使います」って頑として譲らないんですよ(笑)」と、スタッフトークでMCを務めたプロデューサーの御手洗の強いこだわりを明かし、それを受けて御手洗は「勇気100%は作品にとって大切な曲だという想いがありました。馬飼野さんにも劇伴のオーダーの時、今回は全部新録として作っていただきたいという話の中で、TVシリーズだと勇気100%のアレンジはいくつか作られていると思うのですが、今回は劇伴の中でも勇気100%は使わずに作って欲しいです、という縛りのあるオーダーをさせていただきました」と語り、馬飼野さんは「TVシリーズとは変えたいということも話していたし、劇中で勇気100%を使わなかったことはすごく良かったんじゃないかなと思います」とコメント。続けて御手洗は「監督から「勇気100%のところにもクレジットを入れるとスタッフロールをもう少しゆっくりにできるよ」と言われたんですけれど、やっぱり勇気100%が流れているところはまだエンディングではないというか…”勇気100%が流れる日常”を取り戻す、という作品だと思っていたので、ここは曲と絵を全面に見せたいというお話をさせていただいた結果、高速スタッフロールになってしまいました(笑)」 、藤森監督も「ちゃんとそれを受けてそのようなフィルムに作っているので、非常に良いラストですよね」と、3人ともこだわって良かったポイントだったと振り返りました。

雪のなかのきり丸

また、きり丸が雪のなか軒下にいるシーンで、微かに「勇気100%」が流れる演出を提案したという藤森監督は「その後の勇気100%を最大限に有効にするための演出です。このシーンはきり丸がまだ幼い頃、仲間に出会う前の孤児の時代ですが、見上げた雪から微かに勇気100%のオープニングが聞えてプツンと途切れる演出をしてるんです。これはきり丸の未来にある一つの可能性だよ、という風な使い方をして、ただまだ繋がってないから途中で不自然な途切れ方をさせているんですね。この後きり丸がとりあえず生き延びることができて、それから彼はいくつかの選択をしたと思うんですよ。それは何かというと、この状態からだときり丸は野盗になってもおかしくない、奪われる側から奪う側になってもおかしくないかもしれないんだけど、そうせずに働いて銭を稼ぐという選択をした。それで入学金を貯めて忍術学園に入学するとか。いくつかの選択をして、次のシーンの”仲間と一緒に帰る”という現実にたどり着いたんだっていう、そういうふうな演出になっています」と、想いを込めた演出について語り、このシーンについて馬飼野さんは「以前、応援上映を観させていただいて、ここのシーンで「誰か毛布かけてあげてー」って言うんですよ、もう感動しました。皆さん様々な角度や見方があって、それは藤森監督の想いがきっと伝わっているのかなって感じがしました」とコメントしました。

土井先生 vs. 諸泉尊奈門のアクションシーン

本作の見どころの一つでもあるアクションシーンで流れる楽曲について、藤森監督は「ここはスポーティーな感じにしてほしいなということでお願いしたと思います。いろんな戦闘シーンがあるんだけど、あんまり怖くないというか、どちらかというと純粋に試合をしてる、技を競いあってるというスポーツのイメージでお願いしますということでご相談したと思います」と振り返り、馬飼野さんは曲を作ったときの想いについて「初めはあまり理解できなかったんですよ。でも(土井先生が尊奈門を)軽くあしらっている感じと言われて、なるほどと。今言っていたスポーツとかエアロビクスのテーマになってもいいような軽さや、余裕のある感じにしました。ダンス音楽のように踊りたくなるリズムですよね」と語りました。

天鬼 vs. 六年生のアクションシーン

「忍たま」らしさから一番外れた曲でオーダーしていたという、天鬼が初めて姿を現し六年生と対峙するシーン。イメージ通りでワクワクすると語る藤森監督は「例えば戦隊モノとか、あるいはアメコミヒーローのコスチュームを装着しているシーンのようなイメージでお願いしました」、馬飼野さんは「こういう感じのものは最近あまり作ってなかったんですよ。だから初めは取り掛かる時に少し時間がかかったんですけど、基本的にロックテイストのサウンドがいいのかなと思って。ギターで力強さをだしました」と振り返りました。こだわりの部分について訊かれると馬飼野さんは「竹林のシーンの絵が、自分にとってすごくインパクトがあったんですよ。今回は絵が先行で始めにコンテから頂いて、途中から絵が出来て、後半はセリフも入ったものを見せていただいて。始めのコンテだけで描いていたサウンドから、どんどん自分の中でイメージが少しずつ変わってくるんですよ。だから絵を見ながら作れたというのもすごく良かったと思います」と語り、続けて「最初の打ち合わせの時に、映画館で鳴らした時の重低音が欲しいということは仰っていたので、ドラムの音とか低い楽器の音をなるべく強調するように作ったつもりです」と、コミカルな曲が多いTVシリーズとは異なる、本作ならではの印象的な楽曲の誕生について語りました。

「一緒にかえろう〜追憶〜」

本作の柱にもなった曲「一緒にかえろう〜追憶〜」。あまり迷わずに作ったというこの曲について、馬飼野さんは「八方斎のダンスシーンと同じように最初からイメージがあったんですよね。曲的には二曲目に作った曲だと思います。ダンスシーンが一曲目で。ここも打合せを重ねながらテンポを緩やかにしたりとか、いろいろやり取りしましたよね」とコメント。さらに、藤森監督の考案から入った大塚明夫(山田伝蔵役)のハミングについて、馬飼野さんは「大塚さんの声の存在感ですね。低音で歌うイメージがすごくよく理解できました」と絶賛し、続けて藤森監督は「ここは、きり丸がとにかく感情を押し殺して、殆ど無表情に掃除をしているシーンで、絵があまりにも辛いものだから、曲としては包みこむような優しい曲にしたいな、人の声があるともっといいなと思っていて。ただ歌を歌ってしまうとセリフの邪魔になるので、ハミングみたいな感じでお願いしたかと思います。父性の象徴のような感じでオーダーさせていただいたのを覚えております。最終的には子守唄みたいに歌っていただきました」と振り返りました。

さらに、土井先生の記憶が溢れるシーンで流れる「一緒にかえろう〜追憶〜」のアレンジ楽曲では、藤森監督のアイデアによりトレモロが使われているとのこと。この楽曲について馬飼野さんは「ギターはやっぱりアコースティックな木の温もりがあって心が癒されるんですよね」と語り、藤森監督も「トレモロって何かを思い出すような感じがありますよね」とコメントしました。

そして再び「一緒にかえろう」が使われる終盤について、馬飼野さんは「この映画を観て、一番最後に温かい気持ちで帰ってもらえたらいいなと思って。この曲は、一年は組達皆が入ってくる場面にメロディーが合うように変拍子にすることで、尺を調整して合わせているんですよ。」と明かしました。続けて「転調の後に一拍縮めて、この曲は4分の3拍の曲なんですが4分の2拍にしています。一年は組がでてくる場面に合わせるとすごく素敵ですねって御手洗さんにアイデアをいただいて。制作する時ってその過程でいろんな人がいろんな意見を出し合って、それで徐々に作っていくものですから」と語りました。

藤森監督は、音楽に関して数々の難しいオーダーをしていたことを振り返り、藤森監督「オーダーする側に音楽に関する上手い言葉がないんですよね。イメージや想いはあるんですけれども、それを正確な言葉にできなくて」と言うと、それに対して馬飼野さんは「言葉になっていなくてもなるべく理解することを心がけてやっていますし、実際に音響の方々の効果音の付け方とか、その音楽が立つような世界観の作り方とか、最後のエンドロールを見て分かるように本当にすごくたくさんの人がこの作品に関わっているんだということを感じるんですね。約90分の映画なんだけど、これだけの人が真剣に取り組んで、だから本当に素晴らしい映画ができたなと思ってます」と応えました。様々なオーダーに対して、粘り強く何パターンものアレンジを出してやり取りを重ねてきたという馬飼野さんは「楽器ごとにイメージがあるんですよね。先ほど藤森監督が言葉だと難しいと言っていたけど、例えばトランペットにしたら、ギターにしたら、フルートにしたら、それぞれの性格が楽器にあるので。いろいろな提案をしてその中で藤森監督が「これがいいんじゃない」って選んでいただいて」と振り返りました。

六年生の忍務

話題は六年生の忍務の曲に。藤森監督は「(馬飼野さんの提案の中から)選べない時が結構あって。六年生の忍務の曲は、アコギ版とエレキ版とドラム版を作ってもらって、アコギ版とエレキ版が自分では選べなくて御手洗さんに相談したり」と振り返り、馬飼野さんは「このテイストはTVアニメでは一回もやってないですね。ちょっとフュージョン系というか、かなり大人な雰囲気の渋い感じですよね」、藤森監督「エレキは都会的で大人っぽい感じで、六年生って考えたときにやっぱりちょっと素朴なアコギの方が個人的には合ったかなと。曲の優劣じゃなくて、出てくるキャラが六年生だからという理由ですね」と語りました。

「なんでもない日々」

「一緒にかえろう」に繋がる曲でもあるという「なんでもない日々」。御手洗は「ここもセリフがなくて、きり丸の表情でもってくるシーンだったんですけど、ちょっと乾いた明るさみたいな感じがすごい好きで」と語り、藤森監督は絵としては大体尊奈門が酷い目に遭い続けるけど、その中できり丸がいつもとちょっと違うぞというのに、乱太郎としんべヱも気づいていくというシーンですね」、御手洗は「そこがきり丸の表情と尊奈門のちょっとコミカルな表情と相まって、すごく音楽がぴったりハマったなと個人的には思っております」と振り返りました。

オープニング曲「忍術学園の夜明け」

映像と合わせるのが大変だったいうオープニング曲「忍術学園の夜明け」。馬飼野さんは「最初はちょっと大袈裟に考えていて、予告編のようなイメージで捉えていたから、もっと重厚な感じの曲を作っていたんですけど。さりげなく…という感じに調整したら絵に合って良かったです。夜明けの雰囲気はフルートで初めからイメージしていて、爽やかな感じになりました」と話しました。

イベントの最後には
馬飼野さん「今まで「忍たま」の音楽をいろいろやらせていただいたんですけど、登壇してお話するのは初めてなんです。どちらかというと作る方はいいのですが、お話するのが苦手で。今日も、うまく自分の思っていることが伝わっているかは分からないですけれど、「忍たま」自体は、見ていてすごく心が和むし、勇気とかやる気が出てくるような作品です。皆さまにとっても、励みになる作品になっていればと思います」

藤森監督「自分も基本的に縁の下の力持ちという感じで、こんな華やかなところに出てくるのはいいのかな、というふうに思ってしまうんですけれど。今回はスタッフトークということで3回目まで登壇させていただいて、観客の皆さんの顔が見られたのがすごく嬉しかったです。今もニコニコと微笑んでくださって、本当に優しいなあと感じております。改めまして本作に関わるスタッフの方々、それから本作を観て下さった皆さま、どうもありがとうございました」

とそれぞれ感謝を述べ、スタッフトークイベントは幕を下ろしました。

《イベント概要》
日時:2月13日(木)20:28〜21:08 ※上映後イベント
場所:新宿ピカデリー スクリーン1
登壇者(敬称略):藤森雅也(監督)、馬飼野康二(音楽)


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