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劇場版忍たま乱太郎【第一回スタッフトーク:コンテ・演出回】レポート

1/30(木)開催された【第一回スタッフトーク:コンテ・演出回】レポートが到着!

「忍たま乱太郎」劇場版アニメが12月20日(金)全国公開。人気エピソードが満を持して初の映像化!『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』をお楽しみに!
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※本レポートは本編のネタバレを含みます※
この度、第一回スタッフトークが開催されました!
劇場は制作の裏話を聞きに駆けつけた観客たちでいっぱいに。そんな中、盛大な拍手で迎えられたのは、藤森雅也監督、絵コンテ・演出の村野佑太さん、同じく絵コンテ・演出そして動画検査を務めた小池瞳子さんのスタッフ3名。

まず《絵コンテ》について聞かれると、藤森監督はスクリーンに映し出された絵コンテを例に「映画の設計図みたいなものです。」と説明。さらに、《演出》の役割を聞かれると村野さんは「アニメーターに動きや芝居を指示し、芝居の密度やカットの解釈が監督の意図と食い違うことなく、最終的に目標としていた映像に寄せていく作業」と解説しました。
絵コンテ・演出として、小池さんは“愛と正義のドクタケ忍者隊ダンスシーン”を、村野さんは中盤のきり丸が早朝長屋に戻ってきては組のみんなに相談するシーンからしんべヱと八方斎が身長比べをするあたりまでと、エンディングを担当されました。

小池さんは自身が担当する動画検査の仕事について、「原画の指示に従い、動きを作る動画をチェックすること」と説明。具体的には、「原画の指示通りの中割りになっていること」や「そのカットの演出を損なわない品質になっていること」に気を配り、間違った動きや絵があれば修正すること、として時には4枚の原画に対して中割りを入れることで20枚にもなる動画を1枚ずつチェックし、場合によっては1ミリ単位で絵を調整していると話した。また、「そのカットの雰囲気を壊さないように、綺麗な動画でないと演出意図通りの仕上がりにならない」と、クオリティ向上へのこだわりを力強く語った。これに対し、藤森監督と村野さんは「本当に丁寧な仕事をしてくれていると思います」と口を揃えて絶賛。特に、天鬼が苦しむ表情をアップで描いたカットが印象に残っていると話した小池さんは、「髪の毛先の線の抜き方や、手を当てている頬のシワの具合、天鬼の表情に寄った時の細かいニュアンスがすごく出ているカット」と評価し、「締切を伸ばしてもらってまで綺麗に仕上げようと頑張りました。本当にこだわってよかった」と思い入れを語った。

観客からも笑いと興奮の声が鳴り止まない“ドクタケ忍者隊ダンスシーン”については、小池さんがもともと演出志望であることを知っていた藤森監督が、「音楽シーンをやってみる気はある?」と小池さんに声をかけたことが、このシーンを担当するきっかけだったことを明かした。小池さんは当初、「エンディングなら」と引き受けたものの、実際にはダンスシーンだったことに戸惑ったと告白した。
藤森監督は「ここはアニメーターとしての小池さんの、資質が1番濃く出てくると思っていて、やりたいようにやらせようと思っていたんです。ダンスシーンは感性勝負と考えていたので自由にやってもらって、その弾け方を楽しませてもらおうと思っていました」と期待を込めていたことを振り返りました。

また、村野さんが担当するきり丸が鬱々と悩んでいるシーンの演出について、藤森監督は「同じ場面の見せ方でも引きで撮ったカットではきり丸が影の中にいることが印象的だが、次にきり丸のアップのカットになるとその影の奥に明かりが見える。きり丸は今そういう精神状態なのだと、2つのカットの積み重ねや画面の明暗の構成できり丸の心情をきっちり表現している」と絶賛。

さらに、ドクタケの軍師の正体が土井先生だと知って動揺する利吉のカットについて、藤森監督は「膝の間からアオリで表情を見せる、非常にパーソナルな空間から次のカットはいきなり平明な構図にして利吉の気持ちの切り替えを表現する。こういうところが見事に計算されている」と、その絵コンテの素晴らしさを評価しました。

さらに、エンディングの打ち合わせをした際、藤森監督から「例えば福笑いの見た目で学園の日常を描くとか…」とリクエストがあったと笑って話す村野さん。「ものすごく頭を悩ませましたが福笑いでどう日常を描けばいいのか思いつかず、ギブアップ宣言をしたところ『じゃあミニキャラでお願い』と今のものになりました」と振り返り、会場の笑いを誘いました。

藤森監督のコンテについて小池さんは「お客さんの期待を煽るような絵コンテを書かれるのがすごい」と絶賛、村野さんは「キャラクターとカメラの距離感をもの凄く大事にされるんですよ。でもシーンによってはその距離感をあえて詰めるような“いやらしさ“も必要で。要所要所でそういう悪意を取り入れないと良い映画にならないと思うんです。今回は“いやらしい“位置にカメラを置いたりもする思い切りのある絵コンテで僕は好きです」と愛いっぱいに語りました。
さらに、どうしても冒頭の土井先生対諸泉尊奈門シーンについて語りたいという村野さん「いい演出、いい絵コンテっていうのは、本来書かなきゃいけない物語の本筋を追いつつも、カットの積み方に複合的な意味を持たせていろんな魅せ方をしてくのがいるものなんですよね。このシーンはそういった意味ですごく巧みに計算されていまして、今日は『忍たま乱太郎 藤森雅也と月の呪い』と銘打って話をさせてください。」と切り出した。
「冒頭のススキ野原での土井先生と尊奈門の対決では、満月の光を浴びてススキ野原の一帯がすごく明るいんだけれども、同じように明かりを受けているはずの奥の山は全然光を受けてないんですよ。土井先生と尊奈門がいるところだけが不自然に明るく、さらにもう1つ不自然なことにキャラクターが一切影の中にはいらないんですね。忍者らしく岩やススキの陰に身を潜めるんだけど、影の中に入らないで常に 月の光を浴びている状態になっています。これは常に月に見られていることを示唆しています。
『月』は昔から物語上で、移ろい変わるもの、狂乱、死、そういったものの象徴として扱われます。
そしてこのシーンで土井先生が、その月に背を向けてしまった瞬間に、今まで影の中に入ってこなかった土井先生の顔に影が落ちるんですよね。月の中にはニタっと笑っているウサギとドクロがいて、このカットでそのドクロの部分に土井先生を被せたことによって、月のウサギが土井先生を見ているっていう構図になっています。この瞬間土井先生は月に目をつけられたんだと思うんです。
続いて川に映る月とそれを見下ろす土井先生のカットです。『川』というものが、どういった象徴として扱われてきたかというと、あちら側とこちら側を分断する境界なんです。あの世とこの世の境界線である川の中に死の象徴である月がぽっかり浮かんでいて、土井先生はそれをじっと見ている。次の瞬間、土井先生はその死の象徴である月にめがけて飛び込みます。そこで月の呪いが成就するんですね。
皆さんその瞬間は隣からくる八方斎のツルツル頭が目に付くかと思いますけど、水面をよく見てください。月の中にはさっきまで空でニタついていたウサギがちゃんと居るんですよ。
あの瞬間、呪いがかかった人間がもう1人居ます。八方斎です。おそらくあそこに行くまでの間に何かしら月に見定められて、土井先生と同じように誘い込まれているんだろうなと推察できるんですよ。そうでなければ山が紅葉するような寒い時期の真夜中に水練をおこなうはずがありませんからね。
といったことを、物語の本筋や設定とは別のところで矛盾がないよう巧みに印象操作されているという風に僕は思います。本当に好きなシーンですね」

熱のこもった考察に盛り上がるイベントも終盤を迎え、スタッフ陣が観客に向けてメッセージを贈りました。
小池さん「たくさんの方に作品を見ていただいて本当に嬉しい限りです。スタッフ一同、最後まで心血注いで作った作品です。これからも『忍たま乱太郎』をよろしくお願いいたします」

村野さん「前作の公開日が2011年の3月12日、東日本大震災の翌日で。とてもそれどころじゃないという中で 映画が公開されました。僕はその映画には関わっていないんですが、藤森監督含め関係者の方々の心を思うと、今作は弔い合戦だったと思います。今回たくさんの方に足を運んでいただいて、本当に感謝の気待ちでいっぱいです」

藤森監督「この映画は、絶対“ファミリー映画として作り上げてやるぞ”という決意で臨みました。自分の信念として、良いファミリー映画は大人が観ても絶対に面白い。それぐらいの作り込みをしないと子供騙しのものになってしまう。そう考えて、今回みんなの協力も得ながら、厚みのある映像を作ったつもりです。そのあたりも味わっていただけるとありがたいと思います」と挨拶。
温かい拍手に包まれながらイベントは幕を閉じました。

《イベント概要》
日時: 1月30日(木)20:33〜21:33 ※上映後イベント
場所: 新宿ピカデリー スクリーン1
登壇者(敬称略):藤森雅也(監督)、村野佑太(絵コンテ・演出)、小池瞳子(絵コンテ・演出・動画検査)

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